16世紀に入ってダイヤモンドの琢磨技術が進展するまでは、ダイヤは透明感のある白っぽい濁った氷砂糖のような石でした。
古代のダイヤは、採掘された原石のままで、今のような透明度や光輝は、持っていなかったのです。 表面が曇りガラスのようで、美しいとは言えません。 私もダイヤの原石を持っていますが、確かに、美しくカットされたダイヤとは、全く別の石に見えました。 高い屈折率と分散率を誇るダイヤモンドは、的確なカッティングを施し、研磨することで、あらゆる宝石を凌ぐ鮮烈なきらめきを放ちます。 しかし、この地球上で最も硬い物質であるダイヤモンドを削り、磨くだけの技術を、古代人たちは持ち得なかったのです。 けれど、この石は、どんなに努力しても砕けません。 ダイヤを発見した当初、人々は他の石に比べて透明感があり、光に翳すとキラリと光ることから、他の石とは特別に扱ったのではないかと、推測されています。 ダイヤモンドは国王や神官、名のある戦士たちがこぞって珍重しました。ダイヤにまつわる俗信的な効能のためです。 非常に硬い物質であるダイヤを、人々は宝石としてではなくお守りとして利用したのでした。 特に戦場に赴く戦士たちは、ダイヤモンドを持っていると決して傷つかないと信じていました。 西洋人にとって、唯一のダイヤモンド産出国であるインドは、夢と憧れの地でした。 それまでインドまでの行程は非常な危険が伴い、ダイヤはアラブ商人を経由してのみ、ヨーロッパに入って来ました。 しかも、僅かに輸入されるダイヤを手に出来るのは、極一部の王族、しかも男性だけでした。 大航海時代に、海洋冒険家たちが香辛料を求めてインド航路開拓に乗り出して行きましたが、香辛料以外にも、ダイヤモンドを手に入れる目的もあったのです。
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宝石にまつわる
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